お米の価格が高騰し、シニア世代の家庭にも深刻な影響が。管理栄養士の川鍋仁美さんによると、「お米が高いから節約しながら食べているが、とくに朝食ではご飯のかわりに何を食べてよいかわらかない」と悩む高齢者も多いという。そこで川鍋さんが注目しているが「オートミール」。選び方や活用法、高齢者に食べやすいアレンジレシピを教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。
お米が高い…高齢者の朝食に変化
高齢者の栄養相談で最近よく聞かれるようになったのが「お米が高いので、朝食をパンに変えました」というもの。菓子パンやトーストだけで朝食を済ませてしまうと、栄養不足になってしまいます。
そもそもご高齢のかたには、「ご飯の代わりに何を食べればいいかわからない」とおっしゃるかたもいらっしゃいます。
ご飯が主食の場合には、主菜(肉・魚・卵料理など)、副菜(野菜類)、汁物など一汁三菜の献立が組み立てやすく、自然とたんぱく質やビタミン・ミネラルなどを効率よく摂ることができます。パンを主食にするときも、同じ考え方でバランスよく栄養を摂れるおかずの組み合わせを工夫して欲しいものです。
献立を考えるのは朝から大変という場合には、シリアルを活用するのが手軽でおすすめです。中でも、食物繊維も豊富な「オートミール」がおすすめです。お米のかわりにオートミールを活用する場合のポイントを解説します。
オートミールはお米と比べて節約になる?
筆者がスーパーで調査した価格(最安値)で考えてみると、選び方によってはお米よりもオートミールはお得です。1食あたりオートミールのほうが安くなっていました。
ただしオートミールは、有機栽培やオーガニックなど値段が高いものもありますので、そうしたものを選ぶ割高になってしまうので注意してくださいね。業務スーパーやコストコなどではリーズナブルなものが入手できます。
★お米(ご飯)とオートミールの価格
・お米(5kg)3952円(0.79円/g) ・茶碗小盛り1杯(60g)…47.4円
・オートミール(1袋・340g)360円(1.05円/g) ・1食分(30g)…31.5円
オートミールはご飯に比べて食物繊維が豊富
オートミールはオーツ麦を加工して食べやすくしたものです。高齢世帯にはなじみのないかたも多いかもしれませんが、オートミールはご飯と比べると食物繊維や鉄分などの栄養価が高く、カロリーも控えめになっています。
とくに朝ご飯に摂ることで腸内環境にも良く、便秘で悩まれているかたにもおすすめです。
★ご飯とオートミールの栄養価
・ご飯(茶碗小1杯、120g)エネルギー量187 kcal 炭水化物44.6g、食物繊維0.3g
・オートミール(1食、30g)エネルギー量105kcal 炭水化物20.7g 食物繊維2.8g
オートミールは、やわらかくアレンジもしやすいので離乳食に利用するかたも増えています。水分を加えて加熱するとおかゆのような食感になって食べやすくなるので、介護食としても活用できます。
かむ力や飲み込む力が弱ってきているかたで、アレンジ次第でリゾットやスープ、ホットシリアルなどレシピのバリエーションも豊富です。
お米の代わりに活用したり、手軽な介護食として利用したり、使い勝手もよいのがオートミール。栄養バランスの良い朝食におすすめのレシピをご紹介します。
朝食におすすめオートミールのお粥2選
オートミールは電子レンジを利用してお粥風にアレンジするのも手軽な方法です。
電子レンジで簡単朝粥
<材料・作り方>
オートミール大さじ5(30g)に対して水またはだし汁を200ml加えてよく混ぜたら電子レンジ(600W)で2分加熱すれば完成です。
お米からおかゆを作るには、炊飯器だと1時間くらいはかかりますが、オートミールなら電子レンジで2分。忙しい朝にも手軽に作ることができます。
オートミール自体にクセがないので、「和風だし汁」を加えれば和風粥、「コンソメ」を加えれば洋風リゾットにアレンジも広がります。
オートミール大さじ5に対して水分量の目安は200mlで、全粥程度のやわらかめの食感に仕上がります。水分量によってかため、やわらかめなど、嚙む力や飲み込む力に合わせた食感に調節してください。水分を加えてからよく混ぜてから加熱するとかたさにムラなく仕上がります。
ホットバナナ粥
オートミールに含まれる豊富な食物繊維で便秘解消にも。甘めに仕上げて朝の目覚めもお腹もすっきり。
<材料>
・オートミール 大さじ5(30g)
・水100ml
・牛乳100ml
・バナナ1本
・はちみつ適量
・きなこ適量
<作り方>
【1】深めのお皿に材料(バナナは半分)を入れてつぶしながらよく混ぜる。残りのバナナは輪切りにする。
【2】電子レンジで600w2分加熱する。
【3】よく混ぜ合わせて、皿に盛ってバナナをのせる
【4】はちみつ、きな粉をかける。
コーンフレークなら砂糖不使用のものを
シリアルといえば、オートミールよりもコーンフレークのほうが馴染みがあるかもしれません。コーンフレークは砂糖が添加されているものが大半です。お米のかわりに主食として食べる場合には、できるだけ砂糖を使っていないプレーンタイプを選びましょう。
プレーンタイプでも果物を加えることで自然の甘みを活かして食べられます。牛乳を豆乳にかえると植物性のたんぱく質が摂れるのでおすすめです。オートミールもコーンフレークも、飲み込みに問題がないかたであれば、きな粉やすりごまを振りかけるとさらに栄養価がUPします。
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朝食は1日の始まりに私たちの脳や身体を目覚めさせてくれる重要な働きをしています。高齢者のかたにはとくに朝ごはんは欠かさずに、1日3食の食事リズムを維持してほしいと思います。
まだまだお米高騰は続きそうですが、オートミールなどのシリアルを活用して、朝から元気に過ごしてほしいものです。