仕事、プライベート問わず、自分らしく生きるには「パーパス(存在意義)」を明確にし、コピー化することが大事です。しかしながらパーパスとよく似た概念が多く存在しているために、混同し明確にできていない人も少なくありません。本稿では、(株)ツツミ・インターナショナル代表取締役を務める堤藤成氏の著書『ひとことで整える 自分らしく売上とチーム力を上げる言葉の紡ぎ方』(祥伝社)から一部抜粋・再編集し、混同されがちな3つの概念「ミッション・ビジョン・バリュー」と自分の特徴をコピー化する方法について解説します。
パーパスの背景としてのミッション・ビジョン・バリュー
自分らしく生きるには、「パーパス(存在意義)」をコピー化することが大事だとお伝えしましたが、その際にまずは混同しやすい言葉として、ミッション(MISSION)・ビジョン(VISION)・バリュー(VALUES)があります。これらの概念はこれからお話しするパーパスの前提ともなる言葉なので、最初に整理しておきたいと思います。
まずは [図表1] をご覧ください。
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』というゴーギャンが描いた作品です。
[図表1]『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』(ポール・ゴーギャン作、ボストン美術館蔵) 提供: Iberfoto /アフロ
ちなみに作品名に記されているこの3つの問いは、人類がたどり着く究極の3つの問いだといわれています。これまでの歴史の中で、哲学者や科学者やアーティストなど、最後はみんなこの3つの問いと向きあうそうです。じつはこのそれぞれの問いと連動し呼応したものが、ミッション・ビジョン・バリューとなっています。
ミッション(使命) →過去
まず「我々はどこから来たのか?」という問いの通り、これまでの自分の過去を見て、自分の原体験と向きあう領域です。たとえば、昔いじめられた経験があるからこそ、自分の使命が「いじめ撲滅」の取り組みになるという感覚です。
バリュー(価値基準) →現在
次に「我々は何者か?」という問い。たとえば、現在ジャーナリストという職業に就いているのであれば、自分は社会課題に訴えかけていくのが得意であると整理してみる。自分のできることから今この瞬間に行動をしていきます。
ビジョン(理想像) →未来
そして最後は、「我々はどこへ行くのか?」です。未来に想いを馳(は)せ、どこへ行くのか、目指したい理想像と向き合ってみる。たとえば、「助け合いの社会をつくる」という未来像にワクワクすることです。
[図表2]人類がたどり着く究極の3つの問い
過去にいじめを受けた原体験から、「いじめ撲滅」のミッションを持ち、現在のジャーナリストとしてのバリューで社会に対して問題提起し、未来にいじめのない「助け合いの社会をつくる」というビジョンを実現する。
このように、「我々はどこから来たのか」「我々は何者か」「我々はどこへ行くのか」という3つの問いに呼応して、ミッション・ビジョン・バリューがあるのです。
「唯一無二の人生」を歩むコツ
それでは「山登り」におきかえて、この3つの概念についてもう少し詳しく説明していきましょう。
どんな理由で? →ミッション(Must:使命を果たす理由)
どのような山に? →ビジョン(Will:共に目指したい未来像)
どのように登るか? →バリュー(Can:価値基準・行動指針)
まずは「なぜ、この山に登りたいか?」という理由にあたるのが、ミッション(使命)です。
どんな理由でその山に登りたいのかについても、多くの理由が考えられます。景色が映える美しい山を見つけてその景色をSNSにアップして有名なインフルエンサーになりたいという人もいれば、景色が綺麗なこの山だけに咲いている特別な花を研究したいというプラントハンターのような人もいるかもしれません。
続いて、「どんな山に登りたいか」。これがビジョンにあたります。
ひとえに「人生は山登りである」といっても、どんな山に登りたいかは人それぞれ違います。エベレストの頂上のように、とにかく標高が高いところを目指したい人もいれば、景色が美しい山に登りたいという人もいる。
一方で、みんなが知らないニッチな山だけど、私だけが知っているような山に登りたいという人もいる。人それぞれどんな山に登りたいかによって、目指す山頂の景色も違いますよね。これがビジョンにあたります。
最後は、「どう登るか?」というバリュー(価値基準)についてです。
登り方についても個性は現れます。断崖絶壁でも最短最速で登りきりたいという人もいれば、周りの景色を楽しみながらゆったりと登りたいという人もいると思います。
また、遭難しないためにたくさんの荷物を背負って用意周到に備えてから出発する人もいれば、まずは登れるところまで登ってみようと身軽な格好で行く人もいるでしょう。この価値基準・行動指針というのも個性が現れるポイントです。
ちなみにニーチェは、こんな言葉を残しています。
登山の喜びは、山頂に達したときに頂点となる。しかし、私にとって、一番の楽しみは険しい山脈をよじ登っているときである。険しければ険しいほど、心臓は高鳴り、勇気は鼓舞される。
この言葉のように、人生は山登りだと考えると、どんな理由で、どんな山に、どう登るのか。その山登りのプロセスこそが、唯一無二の人生を紡ぐのではないでしょうか。
■らしさを紡ぐコピー化のコツ
人生において、どんな山に、どんな理由で、どのように登るかを考えてみよう。
堤 藤成
株式会社ツツミ・インターナショナル
代表取締役