2024(令和6)年度の福島県内企業の倒産件数は110件を超え、リーマン・ショックの影響が残っていた2010(平成22)年度を上回り、過去15年で最多となった。帝国データバンク福島支店と東京商工リサーチ郡山支店が2日、発表した。負債額10億円以上の大型倒産はなく、新型コロナウイルス関連融資の返済に苦慮したり、人手確保のため賃上げせざるを得なかったりした中小・零細企業の倒産が目立った。全国も同様の傾向で、金融機関による貸出金利上昇も重なり、倒産は今後も増えると両支店はみている。
帝国データバンクによると、負債額1千万円以上の法的整理による年間の倒産件数は117件で、前年度から24件(25.8%)増えた。負債総額は133億6300万円となり、前年度比2億6800万円(2.0%)の減。117件のうち9割に当たる106件は販売不振や業界不振などを理由とした「不況型」だった。業種別では建設の34件が最多で、サービス24件、小売20件、運輸・通信13件、製造11件、卸売8件、不動産3件などが続いた。
東京商工リサーチによると、負債額1千万円以上の年間倒産件数は121件で、前年度比29件(31.5%)の増。負債総額は149億6100万円で前年度から5億4200万円(3.8%)増えた。121件のうち9割超の111件が「不況型」。業種別に見ると、サービス・その他が38件で最も多く、建設が36件、運輸12件、製造10件、卸売と小売は各8件だった。
リーマン・ショックの影響を引きずった2010年度の倒産件数は帝国データバンクのまとめで99件、東京商工リサーチの調べで112件。負債総額はともに400億円を超えていた。
両支店によると、県内の中小・零細企業には価格転嫁が十分にできず利益が出ない中でも、人手確保、物価高に苦しむ従業員の生活のために賃上げを決断せざるを得ず、本来は事業遂行に蓄えておくべき資金を取り崩すケースが出ている。県や県商工会議所連合会など4団体による調査で、県内企業が人件費や原材料費の上昇分を価格に反映できた割合を示す「転嫁率」の平均は全国平均を3.1ポイント下回る46.6%だった。
新型コロナウイルスの5類移行後も業績が戻らず、コロナ対策で実施された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済に苦しむ声は根強い。建設、運輸では昨年4月に始まった時間外労働の上限規制への対応経費増も影響した。資金繰りの圧迫が企業を倒産に追い込んでおり、東京商工リサーチの担当者は「新規借り入れができないなど体力のない小規模企業から息切れし、倒産件数は高い水準が続く可能性がある」と分析する。
日銀の追加利上げ決定を受け、金融機関の貸出金利は上昇。帝国データバンクの担当者は「中小・零細だけでなく、準大手でも資金繰りに困る企業が出るのではないか」と懸念する。
県は専門家派遣による企業の経営分析、経営支援プラザでの相談対応などを講じてきた。経営金融課の担当者は「中小・零細企業は県内事業者の大半を占めており、地域経済にとって重要な存在だ。引き続き支援体制をしっかりと整えたい」と話した。