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戦略コンサル、グローバル企業での事業開発、エグゼクティブの実務に加え、アーティスト・研究者・母の視点から発信しています。

春、新しいお姉さんっぽい服に袖を通して登校していく娘の背中を見送った朝。

ふと、20年前の自分の姿が重なりました。

まだ駆け出しのコンサルタントだった私。

男性ばかりの会議室で「お茶をお願い」と言われ、「私はコンサルタントです」と笑って返しながら、実は毎回、心の中では小さなため息をついていました。

でも、なんとか踏みとどまれた。

なぜかと聞かれたら、「私は私でいいんだ」と信じられる“何か”が、心の奥にあったから。

あの頃の私は、周囲の期待や常識のなかで、必死に“正解”を探していたような気がします。

ちゃんと評価されるには、ちゃんと振る舞わなくちゃ。

そうやって、いつも「誰かの望む正しさ」を追いかけていた。

でも最近は、少しずつ変わってきました。

「正しさ」って、実はすごく曖昧で、時代や場所や相手によって簡単に変わってしまうものなんだなと感じています。

だから今は、誰かの期待に合わせるよりも、「自分がどうありたいか」を大事にしたい。

そんなふうに思うようになりました。

そして、そんな私の気持ちに静かに寄り添ってくれたのがこの本──

『 What I Told My Daughter: Lessons from Leaders on Raising the Next Generation of Empowered Women (私が娘に伝えたこと——次世代の女性たちへ贈る言葉)』(以下、『 What I Told My Daugher 』)。

娘に語るように綴られた言葉たちが、気づけば、私自身の背中をそっと押してくれていました。

娘に語った言葉から見えてくる、女性たちの“ほんとうの強さ”

『 What I Told My Daughter 』は、CBSエンターテインメント元会長のニーナ・タスラーが編んだエッセイ集。

政界、法曹界、ビジネス、アート、スポーツ……各界の女性リーダーたちが、自分の娘に贈ったメッセージを語っています。

たとえば、ルース・ベイダー・ギンズバーグ元最高裁判事が語る「自分を信じる人と結婚すること」。

ウーピー・ゴールドバーグの「批判に耳を傾けすぎないこと」。

ナンシー・ペロシ元下院議長の「女性には無限の機会があるが、保育と生殖の権利が重要である」。

どれも、理想論ではなく、壁にぶつかりながらも進んできた彼女たちの“本音”です。

私たちが日々感じるもやもやや葛藤に、そっと名前を与えてくれるような言葉たち。

読んでいて、何度もうなずきました。「あ、これ、娘にも伝えたいな」と思う瞬間がたくさんあったんです。

読んで気づいた、私の“これまで”と“これから”

実は私自身、『 自由に働くための出世のルール 』『 自由に働くための仕事のルール 』という2冊を、女性のキャリアについて書いています。

日経ビジネスオンラインで連載していたコラムがベースで、私がこれまで現場で試してきた“働き方の戦術”を詰め込んだ本です。

でも、それらを書きながら、心のどこかでずっと考えていたことがあります。

「ルールや戦術を伝えるだけで、本当に次の世代の女性たちは前を向けるだろうか?」

「戦わなくてもいい場所で、安心して自分らしく生きていける社会って、どうやったら作れるんだろう?」

『 What I Told My Daughter 』は、そんな私の心の奥にある問いにも、静かに答えてくれました。

これからの時代にこそ大事にしたい5つのこと

本の中でとくに心に残ったテーマを、私なりにかみ砕いて5つ挙げてみました。

どれも「ちゃんとしなきゃ」って肩に力が入ってるときに、そっと手を差し伸べてくれるような言葉たちです。

1. 完璧じゃなくていい、自分を取り戻す力を育てよう

私自身、かつては「完璧じゃないと評価されない」と思い込んでいました。母がとても厳しかったこともあり、100点以外は受け付けないと言われていたことも大きかったと思います。高校の頃、数学で99点を取って本気で泣いたこともあります(笑)。あれから、30年以上経っても、同窓会で必ず魚にされる話題です。

でも、キャリアを積むうちに、完璧主義は自分を苦しめるものだと気づきました。

たとえば、GEで事業開発を担当していたとき。ある新規事業に全力で取り組んだものの、最初の試みは思うような成果が出ませんでした。そのとき、「全部うまくやろう」としていた自分を一度手放して、「何が本当に必要か」を考え直したんです。チームで対話を重ね、顧客の声を反映しながらプランを練り直した結果、大型の受注につながりました。

『自由に働くための出世のルール』にも書きましたが、戦略的に働くには「失敗しない」よりも「立ち直る力」のほうがずっと大切。

完璧じゃなくていい。崩れても、しなやかに立ち上がる力。

それが、これからのリーダーに必要な強さだと感じています。

2. 怖さを乗り越えるのは、勇気じゃなくて、ちょっとの好奇心かも

誰だって、「未知のもの」に対しては怖い。

私もそうです。だけど、「やってみたら案外楽しいかも?」という小さな好奇心が、怖さをちょっとだけ軽くしてくれるんですよね。

GEで「この業界ではこうするのが当たり前」と言われていた手法に、私たちのチームはふと疑問を持ちました。「なんで?」と立ち止まり、競合の事例を調べたり、お客様に直接ヒアリングしたり。そこで見つけた“別のやり方”が、私たちの提案の強みに変わったんです。

実はこの “当たり前を疑う ”って、私がアート思考を研究している理由でもあります。(ビジネスパーソンだけでなく、声楽家でアートを扱うからということもありますが)。

直感とか好奇心って、戦略にもちゃんと使えるんです。

恐れに立ち向かうのではなく、「ちょっと違う景色を見てみたいな」という気持ちが、背中を押してくれる。そんな感覚、もっと大事にしていいと思います。

皆さんにも、最近「ちょっと気になる」「やってみたいかも」と思ったこと、ありませんか?

3. リーダーって、誰かを引っぱる人じゃなくて、ちゃんと“聴ける人”

ボストン・コンサルティング・グループ時代、私の頭は常に「なぜ?」を問い続ける訓練でいっぱいでした。 その文化のおかげで、物事の本質を深く掘る力はついたけれど、気づけば部下にも「もっと考えて」「ちゃんと詰めて」と、つい求めがちに。

でもある日、「あなたはどう思う?」と何気なく聞いてみたときに、驚くほど鋭くて深い視点が返ってきたんです。 その瞬間、ああ、リーダーって「正しい答えを与える人」じゃなくて、「考えを引き出し、共に考える場をつくる人」なんだと、腑に落ちました。

私のマネジメントの核は、いま「問いかけの力」と「聴く姿勢」です。 社員にはよく、「役員の頭の中を引き出して、自分のアイデアと掛け合わせなさい」と伝えています。 上司に気に入られることより、いい質問を投げかけることのほうが、ずっと価値があるから。

娘にも、「答えを知ってる人より、いい質問をする人になってね」と、いつも話しています。 きっとこれからの時代、そういうリーダーが求められていくと思うから。

4. 「自分らしさ」は、無理に主張しなくても、ちゃんと伝わる

GE時代、あるプロジェクトで大きなミスをしてしまったとき、上司から「あなたらしさを忘れていたからだと思う」と言われたことがありました。

その時はショックでした。でも、改めて振り返ると、「女性らしさは極力出さずに」と言われて、パンツスーツをわざわざ買ったほど、「男性と同じように」振る舞おうとしすぎて、私の強みがすっかり埋もれていたんです。

私はもともと、物事を多面的に捉えるのが得意で、クライアントを含めたチームの空気を読んで戦略アプローチを調整する力がありました。

でも「ロジカルに戦え」と言われすぎて、それを抑え込んでいたんですね。

その後、「女性らしさ」を出すかどうかじゃなくて、「自分らしさ」を出す、という発想に変えました。

日経ビジネスオンラインの連載をベースに、ディスカヴァー・トゥエンティワンから出した2冊の本も、そういう思いから書いたものです。

武器は持っていい。でも、誰かのコピーにならなくていい。

そんな働き方が、きっとこれからの時代のスタンダードになるはずです。

5. 声を持つこと。それを使うこと。それが未来を変える一歩になる

以前のTheLetterでも紹介したエピソードですが、取締役会で唯一の女性として発言するとき、今でもちょっと緊張します。

でも私は「女性の視点から」ではなく、「顧客データでは」と言います。

感情ではなく、事実で語る。

そして、その中に自分の思いや信念を込める。

違う視点を差し出すことで、組織がより強くなれると信じているからです。

『 What I Told My Daughter 』にも、「声を上げること」の大切さが繰り返し語られていました。

声を持つこと。それを使うこと。それが、 小さくても確実な“変化の種” になるのです。

どんな立場であれ、自分の意見を持ち、それを伝える。

その繰り返しが、少しずつ社会を動かしていくのだと思います。

この5つは、私がこれまでの仕事・人生・子育ての中で、何度も壁にぶつかりながら実感してきたものです。

そして、娘や若い世代の女性たちにも、「がんばらなくていいよ」ではなく、「自分を信じて、自分のペースでいいから進もうね」と伝えたいメッセージでもあります。

「正しさ」じゃなくて、「あたたかさ」を伝えていきたい

この本には、たしかに有名人の言葉がたくさん載っています。

でも、そのどれもが驚くほど身近で、肩の力が抜けていて。

「こうあるべき」ではなく、「あなたのままで大丈夫だよ」と語りかけてくれるような、あたたかい本でした。

私はこの本を読んで、あらためて思いました。

これからのリーダーシップに必要なのは、“正しさ”より“あたたかさ”だと。

自分を守ることと、他人を思いやること。

そのどちらも大切にできる言葉を、私もこれから次の世代に届けていきたいと思っています。

この春、新しい一歩を踏み出すあなたへ

新学期、新年度。

きっと今、ちょっと緊張していたり、不安でいっぱいだったりする人もいるかもしれません。

でも、安心してほしい。

あなたがあなたらしくあること、それだけで、少しずつ、世界が優しくなっていく気がします。

『 What I Told My Daughter 』は、そんなあなたにそっと寄り添ってくれる本です。

娘を持つ親としても、ひとりの女性としても、私はこの本を、「自分に贈る本」として手元に置いておきたいなと思いました。

そしていつか、あなたが誰かに何かを伝える立場になったとき、

どんな言葉を選ぶでしょうか?

あなたなら、22歳の自分に、どんな言葉を贈りますか?

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※『What I Told My Daughter』は、まだ邦訳が出ていない英語のエッセイ集です。

でも、大切なメッセージは、どんな言語でもまっすぐに届くんだなと感じた一冊でした。

英語の勉強にもなりますし、インスピレーションがほしいときにパラパラとめくるだけでも、心に残ることばと出会えると思います。

 
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